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10/23/2018

フレキシブルファクトリパートナーアライアンス
国立研究開発法人情報通信研究機構
2018年10月23日

製造現場に混在する多様な無線通信を安定化する無線通信規格ドラフト版を取りまとめ

~フレキシブルファクトリ実現に向け、無線通信利活用を推進~

フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)*1は、製造現場で様々な用途として混在利用される多様な無線システムの安定化を図るための新たな無線通信規格のドラフト版を取りまとめました。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、SRF無線プラットフォーム*2を提案し、無線規格の基本構成として採用されました。本ドラフト版は、製品への適用を可能にするために必要な付加機能と、機能間のインターフェースを明確化したものです。

本ドラフト版では、複数の無線システムを管理・協調制御するフィールドマネージャが、ポリシー設定、管理、監視を行うことが特長です。この特長をプラットフォームとして構築することで、製造現場に混在している多様な世代、規格、メーカーの無線システムが共存及び協調します。この結果、製造現場での無線通信利活用が促され、工場内の情報可視化、統合管理が可能になり、生産性向上が達成されます。

本ドラフト版の概要は、FFPAが10月30日に開催するセミナー「無線の利活用がもたらす製造現場の変革」において、市場のニーズやベンダ、システムインテグレータ、オペレータなどのベネフィット、技術要件を記したホワイトペーパーとともに発表します。

【背 景】

製造現場では、人手不足や働き方の変化などによる制約がある中で、生産性向上のための情報通信技術の利活用が進んでいます。具体例として、以下のニーズがあります。
・品質管理のため古い生産設備の精細な状態や、正しく作業がされたかの判定をリアルタイムで知りたい。
・人と生産設備の協調が進み、移動する人や自動搬送機などの間で確実な通信を行いたい。
・変種変量生産、マスカスタマイゼーションのため、工程やレイアウトの柔軟な変更に対応したい。

無線通信は、手軽さ、移動性、柔軟性の特長を有しており、これらのニーズを満たす有効な通信手段です。機器状態監視、製品検査、工程管理、環境センシング、機器制御など多様な用途(アプリケーション)で無線システムが導入される事例が増えており、今後も更に増加するものと予想されます。

製造現場では無線通信の不安定性への懸念があります。様々なアプリケーションが免許不要周波数帯の無線規格を用いて独立に運用され、無線区間での干渉問題が生じ、アプリケーションが必要とする通信品質が満足されず正常に動作しないという問題が起こるためです。こうした懸念を解消するため、NICTが機能とその間の情報のやり取りを定義した基本構成として、従来にはない「多種多様なシステムの協調と共存」という新しい概念を取り入れたSRF無線プラットフォームを提案しました。さらにNICTとSRF無線プラットフォームに高い関心を持つ企業は2017年7月にFFPAを設立し、SRF無線プラットフォームを具体化し、社会実装していくために無線通信規格を策定してきました。

【成 果】

このほど、FFPAは、NICTが提案したSRF無線プラットフォームを製品に適用可能にするために、必要な機能の付加と、機能間のインターフェースの明確化を行った新たな無線通信規格のドラフト版を取りまとめました。

本ドラフト版では、フィールドマネージャが、ゲートウェイや無線端末から構成される複数の無線システムを管理・協調制御します。その際、
① 各無線システムにポリシー(方針)を与えることにより、無線資源(周波数、時間、空間)を配分すること、
② 無線通信と応用システムを意識した管理を行うこと、
③ 無線通信環境の監視を行うことにより、多様な無線通信を安定かつ効率的に運用すること
が可能となります(グローバル制御)。

無線通信環境は局所的に、急激に変化することに対応するため、単一システムでの自律的な制御を可能にしています(ローカル制御)。

既存の無線機器を含め、混在する多様な規格、メーカー、世代の無線システムが共存及び協調できるように、通信制御が個別の無線システムに依存しない比較的上位層での制御が可能な枠組みを採用しています。さらに、無線システムが汎用的に使われることから、無線通信規格の一部はIEEE 802.1規格*3を参照、協調しています。

SRF無線プラットフォームは、製造現場で用いる無線通信に以下の価値を提供します。
・無線通信が混雑・変動する環境下でもシステムが止まらない信頼性
・製品品質や生産性を向上させるための多数かつ多様な無線システムを収容できるシステムキャパシティ
・IT専門家が不在でもデータフローや無線環境の管理ができるシステムの安定性と保守性

今回とりまとめたドラフト版の概要は、FFPAが10月30日に開催するセミナー「無線の利活用がもたらす製造現場の変革」において発表します。同時に、市場のニーズやベンダ、システムインテグレータ、オペレータのベネフィット、技術要件を記したホワイトペーパーを公開します。

【今 後】

今後、機能やインターフェースの詳細を検討し、2019年中旬を目途に新たな無線通信規格Ver. 1.0を策定し、製造現場に混在する多様な無線通信を安定化します。さらに、製造現場の情報可視化とネットワークに接続された設備の統合管理を可能にし、生産性向上のため情報通信技術の利活用を推進していきます。

セミナー「無線の利活用がもたらす製造現場の変革」について

VoC Community*4の設立記念イベントとして、ベルサール神田(東京・千代田区)にて10月30日(火)に開催するセミナー。
http://www.ffp-a.org/news/jp-index.html

 

<用語解説>

*1 フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)
フレキシブルファクトリパートナーアライアンスは、複数の無線システムが混在する環境下での安定した通信を実現する協調制御技術の規格策定と標準化、および普及の促進を通じ、製造現場のIoT化を推進するために2017年7月に設立された非営利の任意団体。
メンバー企業は、2018年9月末現在、オムロン株式会社、株式会社国際電気通信基礎技術研究所、国立研究開発法人情報通信研究機構、日本電気株式会社、富士通株式会社、サンリツオートメイション株式会社、村田機械株式会社、シーメンス株式会社の8社。
http://www.ffp-a.org/jp-index.html

*2 SRF無線プラットフォーム
多種多様な無線機器や設備をつなぎ、安定に動作させるためのシステム構成。SRF(Smart Resource Flow)は、製造に関わる資源(人、設備、機器、材料、エネルギー、通信など)をスムーズに流れているように最適に管理するコンセプトで、これを基に構築したプラットフォーム。SRF無線プラットフォームの研究開発は、総務省の委託研究「狭空間における周波数稠密利用のための周波数有効利用技術の研究開発」により実施されている。

*3 IEEE 802.1規格
米国に本部を置く電気・電子技術の学会IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc)が定めるローカルエリアネットワークやメトロポリタンエリアワークの規格の種類。IEEE 802.1ワーキンググループの中間会合(2019年1月14-18日)は、FFPAがホストとなり、日本で初めて広島で開催される。

*4 VoC Community
製造現場での情報通信技術の利活用に関する情報交換を行うためのFFPAが運営するユーザーグループ。VoCはVoice of Customerの略。